これは30年ほど前の本らしいです(米国での発売)
これが邦訳されたのはまた後年という。
だが、読んでいるとなんだかアメリカの医療事情が日本によく当てはまるのでは?
こんな疑問を持ってしまう内容です。
著者が書いたのはもっと前の時期だとすれば、本の出版時期よりも前からこういう事情があったと思われます。
間が抜けている患者さま・・・苦笑
ーーーーーーーーーー以下引用ーーーーーーー
医者を畏敬の対象にしてはいけない
医療における女性差別について話していたとき、ある女性が自分の体験に基づいてこんなふうに信念を語った。
「医者は女性差別の思想で凝り固まっていますが、それは患者の姿勢をそのまま反映したものにすぎません。つまり、医者は自分が患者から期待されていることを肌で感じ、それに応じて医療行為をしているのです。
したがって、患者は医者に診てもらうときは、自分の健康管理は医者とのパートナーシップに基づく合意であり、決定権を握っているのは自分なのだということを最初に明確にしておく必要があります」
患者は医者におどかされて強引に同意させられないように気をつけなければならない。患者が遠慮していると、医者はますます自分が全能者であるかのように錯覚する。警戒心を解いてはいけない。医者がくだすすべての診断、処方するすべての薬、勧めるすべての手術について説明を求め、根拠を示すように要請すべきだ。
医者を畏敬の対象にしてはいけない。医者と患者は対等の立場にあることを医者にわからせることだ。患者が医者に敬意を払うのと同じように、医者も患者に敬意を払うべきなのだから。
健康診断は患者の 〝青田買い〟
女性であれば、目玉商品という言葉を聞いたことのない人はいないだろう。特売品を用意して「お買い得です」と宣伝することによって客を店に引き寄せ、それ以外にもいろいろな商品を買わせる商売のやり方のことだ。
この数十年間、医学界も目玉商品と同じ原理で客を集めてきた。
定期健康診断がそれである。
健康診断とは、体のどこにも異常のない健康な人を引き寄せて検査をし、病気と診断して顧客を獲得するために医者が使う常套手段なのだ。
このやり方が功を奏してきたことは間違いない。高圧的な売り込みに毅然として断ることのできる人でないかぎり、ほとんどの人が健康診断は健康維持のために必要だと信じ込んでいる。
当然だろう。医学界はこの考え方を世間の人びとに広めるために、アメリカがん学会などの組織の協力を得てあらゆる手をつくしてきたのだ。
その典型的な例が「がん検診を繰り返し受けて、がんと闘いましょう」というスローガンである。
わたしは定期の健康診断と検診が無効であることをずっと以前から主張し、非難を浴びてきた。
しかし、アメリカ医師会とアメリカがん学会は最近になってようやく、無症状の受診者にとって健康診断と検診は不利益が利益を上回るおそれがあることを認めるようになった。
とはいえ、これらの組織がこの心変わりを大々的に公表することを期待してはいけない。
しかしながら、アメリカ医師会は定期健康診断の受診を勧めなくなったし、アメリカがん学会も毎年のマンモグラフィー、子宮頚部の細胞診、胸部レントゲン 検査といった定期検診を推進しなくなった。遅きに失したといった感があるが、医学界がついに折れざるをえなくなったのだ。その理由は明らかである。
これらの検査はたんに無効であるというだけでなく、実際に危険であるという確証がいくらでもあるのだ。
定期健康診断が時間と経費の無駄づかいであることは、この十数年来、多くの研究によって立証されている。
もっとも詳細な研究の一つは、カリフォルニアのカイザー健康保険が十年間にわたっておこなった研究である。
保険に加入している三十五歳から五十四歳までの経済的・社会的に似通った地位にある人びとを対象に、定期健康診断を半年ごとに受ける群とまったく受けない群に分けて七年間調査した。
それによると、健康診断を受ける受けないに関係なく、両群の人びとの死亡率と有病率を含めて全般的な健康状況は同じだったことが判明した。
わたしががん検診とそれに付随するさまざまな検査に疑念を抱くのは、それがほとんど無意味であるというだけでなく、受診者に肉体サメージを負わせ、死に至らしめることがあまりにも多いからである。
その典型は子宮頚部の細胞診である。この検査はその有効性を証明する十分な研究がおこなわれていないにもかかわらず、子宮頸がんの画期的な検査法として 医学界でもてはやされている。ある研究では、アメリカの十人歳以上の女性の半分以上が前年にこの検査を受けたと報告されている。
*訳注
日本では、旧厚生省が健康政策を推進し始めた一九六五年から健康診断と人間ドックが急速に普及した。さらに八二年に老人保健法が成立して以来、全国の市 町村が実施する検診(一般検診とがん検診)が盛んになり、アメリカがん学会が提唱した「早期発見」という考え方をもとにした「病気の早期発見・早期治療」 というスローガンが国民の間に定着した。
婦人科医がこの検査を歓迎したのは言うまでもない。細胞診が導入されたおかげで毎年少なくとも一回は患者と接触する機会ができたからである。数多くの研究でこの検査の有効性が疑問視されているが、医者がこの検査を受けないように呼びかけることはない。
そんなことをすれば、受診者に医療処置を押しつける絶好の機会を逸してしまうからである。もしこの検査の有効性について質問されたら、医者は「この検査の有効性は、子宮頸がんによる死亡率の減少によって裏づけられています」と答えるはずだ。
細胞診の有効性を疑問視する十年来の研究報告があるが、医者はこの検査を正当化するためにそれを無視している。
実は、その研究報告のなかで、C・L・シャープとハリー・キーンという二人の医師が次のように指摘しているのだ。
「子宮頸がんによる死亡率が減少していることがいくつかの研究で明らかになっているが、その傾向は細胞診が広く実施される前から顕著だった。したがって、この種の検査が死亡率を減少させるのに有効であるという確証はない」
ニューヨーク大学のアンマリー・フォルツ博士とエール大学医学部の疫学者ジェニファー・ケルシー博士という二人の女性研究者は、毎年数百万人から数千万人の女性を対象におこなわれている集団検診は、子宮頸がんによる死亡率を減少させているという確証がないと報告している。さらに、細胞診がひどく不正確で、その有効性を裏づけるための比較試験がまったくおこなわれていないことも指摘している。
むしろ受診者に大きなダメージを及ぼし、死亡の原因にすらなっているということである。
(中略)
ーーーーーーーーーーーー引用終わりーーーーーーーーーー